1963年 日本 103分
原作はご存知山口瞳氏の昭和37年の直木賞受賞の同名エッセイ。・・ん?エッセイ?作中で江分利氏がモノローグに映像をかぶせて語ってるのが原作なわけ?で、ちゃんとしたストーリーになってる。そんなところにまず感心してしまった。
長靴と下駄の会話とか、トリスウィスキーのアンクルトリスのアニメ(山口氏の単行本の表紙)とか、画面に向かって話しかけられると急に画像が止まり、江分利氏の頭の中の世界が展開されたり、と映像の工夫も盛りだくさん。
戦争の傷跡を残したままの昭和の時代を生きていくこと、江分利氏は時代の流れについていけないちょっと頑固なサラリーマンのように映画紹介では書かれてあったが、確かにそのような台詞を喋ってはいるけれど、見ている印象ではむしろ時代の変化に敏感な、どんなことでも飄々と渡っていける軽さと強さのようなものを感じてしまった。
語源となっているのは「every man」。映画の中の江分利氏のようなことは、誰にでも起こることばかり、特に突出した事件を描いているわけではない。そうした日常こそが大事なことであるし、それは現代のようなスピードの時代にも当てはまると痛感した。