2005年08月20日

家族 #416

1970年 日本 107分

長崎県伊王島で暮らす家族が夢を求めて北海道へ向かう。どちらかと言うと現実逃避っぽい父(井川比佐志)、一緒にみんなで付いていくと決意した母(倍賞千恵子)、よちよち歩きの妹と兄。そして次男に預けることになっている祖父(笠智衆)。列車で3日かかる長旅が始まる。

決して平坦な道ではないとわかっている新たな生活。反対を押し切って目指す北海道。一度決めて出発したんだから、と曖昧模糊としたまま旅は続く。立ち寄った弟の家で現実の厳しさを再度目にし、大阪の万博は入り口まで見物、その夜具合の悪くなった幼子は旅の途中で急死してしまう。なぜここまでして北へ向かうのか、家族は度々ぶつかり合う。そしてようやく辿り着いた北の地で、祖父は安らかに眠る・・。

今だったら飛行機でひとっ飛び、こんな行程にはならないだろうが、列車の旅はそれなりにいいものだ。窓から流れる景色に土地土地の風情を感じ、乗り合わせた乗客の言葉も変わる。カメラは当時の景色を映し出し、東京ではホームで談合する役者たち(クレイジーキャッツ)、遊覧船で船酔いを心配する慌て者の乗客(渥美清)などが出てくる。開いている病院がなく不親切だともらすタクシーの運転手は返事もしないし、北海道で列車の女性たちは子どもが死んだことにみんなで涙する。

そして主題でもある家族について。それまでの経緯は回想シーンでのみ語られる。旅の間は慌しく喧嘩や言いあいばかりしている。責任転嫁する夫、負けずに言い返す妻。ここでは倍賞千恵子は「男はつらいよ」の思慮深い妹とは全く違った強い女の一面を見せる。子どもを失って号泣するシーンでは声を消し音楽を被せた演出も心憎い。つらい目に遭いながらもしっかり夫を支える妻、酔いつぶれて「お前だけが頼りだと」すがる夫。そして終始冷静な目で的確に物事を捉える老いた祖父。孫にも厳しく教育する。場を和ませる長男も誰一人なくてはならない存在である。喧嘩をしても決して物別れになることなく、旅は続いていく。そしてかけがえのない存在が一人また一人と亡くなっていき・・・。

ラストは北海道の地で新たな生活が起動に乗り、新しい生命の息吹を感じさせて終わる。死んでいくもの、生まれていくもの。いくつかの変遷を経て家族は形成されていく。いま、ここにいる家族は決して偶然の巡り会わせではなく存在しているのだと感じさせる。

旅を通じて人生を考える得意のロードムービー。たった数日間でいろんなことが起こり生きる場所も一緒に生きる人も変わっていくが、ぶつかり合うことができる家族がいることは幸せなことだ。

posted by 映画のせかいマスター at 06:42| Comment(0) | TrackBack(1) | か行の映画(33)+ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする